虫歯という、世の中の大部分の人が悩む疾患を通じて、仙骨の働きを見てみましょう。虫歯と聞くと、歯という体の中の独立した一部分の疾患として考えるかもしれません。しかし、実際には、体の中に独立した部分はなく、虫歯ができるのも、体がバランスを取ろうとする働きなのです。虫歯になるということは、その歯はもろいほうがいいと、実は体が判断しているのです。どうして、歯がもろいほうがいい、というようなことが起こるかと言いますと、顎の関節の不整合からきているのです。
歯は、するめのような、ナイフでも切りにくいものを、噛み切ったり、噛みつぶしたりします。また、「歯をくいしばってがんばる」というような表現もあるように、日常的にも、かなり強い圧力がかかっています。歯は元来、頑丈にできていますから、このような圧力に耐えうる構造になっていますが、顎関節に変位が生じると、口の形が変形して、歯並びが悪くなり、より強い圧力が生じる部分と、圧力をあまり受けない部分の不均衡が出てきます。
この結果、強すぎる圧力を受ける箇所は、体全体に大きなストレスを与えるようになります。したがって、歯の質がもろくなり、虫歯が生じるのは、このようなストレスを弱めようとする作用であると言ってよいのです。体は、つねにバランスをとろうとして働きますから、虫歯そのものが悪であるとは言えません。
虫歯をなくすためには、仙骨の調整を通じて顎関節の歪みを調整してやらねばなりません。ところが、歯科医は、虫歯のこのような位置づけを無視して、もろくなった歯に金などの被せものをして補強したり、義歯を入れたりします。その結果、歯は補強されたものの、全身へのストレスはむしろ強まります。歯を補強したために、目が悪くなった、頭痛に悩まされるようになった、内臓が悪くなったなど、より深刻な影響が体のどこかに必ず現れます。このような現象を、現在のセクション別に分かれた医療は、因果関係としてとらえられません。「義歯を入れたので、目が悪くなりました」と歯科医に言っても、「では、眼科に行きなさい」と言われるのがオチでしょう。
このような、いわば過保護な治療が日本人の歯をボロボロにしているのは、眼科医が仮性近視の人に眼鏡を推奨し、日本人を眼鏡使用者だらけにしたのと同様の現象です。